周術期とは、手術やがん化学療法・放射線療法、緩和ケアの治療中およびその前後を含めた一連の期間です。
周術期に歯科医師・歯科衛生士が行う専門的な口腔ケアを周術期等口腔機能管理といいます。
手術後の合併症予防につながる「周術期における口腔ケア」について、厚木市立病院や東名厚木病院、神奈川リハビリテーション病院と地域の歯科医療を担う厚木歯科医師会が連携して、周術期の医科歯科連携事業を行っています。
手術を行う病院の担当医と口腔ケアを担当する厚木歯科医師会の歯科医が連携し、周術期における患者さんの体調回復に向けてサポートしています。
(参考)大西徹郎他:看護技術,51(14),70-73,2005
手術が決まったら…
手術の前に歯科医院を受診しましょう!
手術の前になぜ歯科医院を受診するの?
歯科医院を受診することで、入院中や手術中のトラブルを減らすことができるからです。
全身麻酔の手術における合併症・偶発症のうち、“歯が欠ける、抜ける” “肺炎” は、入院および手術の前に、歯科医院を受診することで予防することができます。
磨き残しのある歯の表面には歯垢(プラーク)と呼ばれる汚れが付いています。歯垢(プラーク)は、細菌が増殖したものです。
歯垢(プラーク)1mgの中には、約1億個の細菌がすんでいて、むし歯や歯周病のほか、いろいろな病気を引き起こすことが明らかになってきました。
肺に入ると肺炎になりやすく、また血管に入ると動脈硬化や、心筋梗塞などの原因の一つとされています。
まずは、お口のチェック
入院中に痛くなりそうなむし歯や歯ぐき、また入れ歯の具合や歯みがきは出来ているかなどを総合的にチェックします。
グラグラしている前歯はないですか? | |
奥歯でしっかり噛めていますか? | |
欠けそうな歯や取れそうな被せものはありませんか? |
お口の清掃は必ず行います
肺炎や口内炎の予防として、歯垢(プラーク)や歯石を除去し、口腔内環境を整えます。
問題があれば
入院までの限られた日数でできることを詳しく説明し、早急に治療します。特に全身麻酔時に問題となりそうなグラグラしている歯は固定処置のほか、必要に応じて抜歯を行うこともあります。
いつ受診したらよいですか?
お口の状態によっては、治療に回数のかかる場合もあります。
入院及び手術の日程が決まったら、出来るだけ早く受診してください。
歯科医院には、
- 入院して手術をすること
- 病院名
- 入院予定日
以上のことを必ずお伝えいただき、事前に予約の電話を入れてください。出来るだけ早い日に受診できるよう、手配します。
きれいなお口で手術に臨んでください
麻酔科医からみた周術期等口腔機能管理の必要性
全身麻酔では、口から気管の中に柔らかい樹脂製の管を入れて人工呼吸器につなぎ、機械で呼吸を行います。
このとき、2つの問題が生じます。
問題(1)
グラグラした歯があると、管や器具が当たって抜けてしまうかもしれません。
問題(2)
麻酔中は飲み込む動作がなくなるため、のどの奥に唾液がたまります。
口が汚いと、汚い唾液が気管の中まで垂れ込んで、肺炎を起こす可能性があります。
麻酔終了時、口の中を吸引すると、唾液がたくさん引けてきます。吸引だけでは除ききれません。術前に是非とも口をきれいにしてください。目標は、グラグラした歯がないことと、口臭がしないことです。